人生の転換期なのかもしれない

無線に流れる住所地まで車を走らせると、待っていたのは若い女性‥どうやら妊婦さんのようでした。目的地を尋ねると、隣町の一軒家を指定してきました。彼女は終始落ち着かない様子で、スマホをちらと見ては置きを繰り返します。
目的地に近づくにつれ、後部座席からはすすり泣きが聞こえてきました。
閑静な住宅街の一か所に到着し、清算のため振り返ると、泣きはらした女性は、窓から庭でバーベキューを楽しむ一家をただじっと見ていました。
「この子の父親です、あの人」
「楽しそうね」
と寂しそうにつぶやきました。私はドキッとして、「そうですか、本当にここで降りられますか?」と尋ねました。彼女は力なく、
「この人の人生、めちゃくちゃにしたくて来たけど、あんなに楽しそうな子供達を見てたら、私の赤ちゃんがみじめになるだけね。」と。
私は勇気を振り絞って、
「あなたは今、何人もの人生の転換期をまさににぎっているところですよ、その中で誰を一番幸せにしたいですか?お腹の赤ちゃんではないですか?」
と答えると、また力なく、来た道を戻るようつぶやきました。
10年あまりのタクシードライバー歴で今日ほど、人間の寂しさを垣間見た瞬間はありませんでした。転職を考え始めた矢先の子の出来事に、私の心もまた揺れるのでした。